この記事の要約
テンパリングをしたのに、つやが出ない。白い筋が出る。いつまでも固まらない。
こうした失敗には、必ず原因があります。そして、症状を見れば原因が特定できます。
テンパリングとは、カカオバターの結晶を安定した形に整える作業です。温度を上げて溶かし、下げて結晶を作り、少し上げて不安定な結晶だけを溶かす。この3段階で行います。
失敗の原因は、この3段階のどこかにあります。
白い筋が出る。 温度が高すぎた可能性があります。
固まらない、べたつく。 温度が高すぎたか、そもそも結晶ができていません。
ざらつく、粘る。 温度を下げすぎた可能性があります。
この記事では、症状別に原因を特定する方法と、正しい手順を整理します。温度計は必須です。感覚では判断できません。
結論:温度計を使い、3段階の温度を守る
先に結論をお伝えします。
テンパリングの失敗は、ほとんどが温度管理によるものです。
そして、温度は種類によって違います。
| 種類 | 溶かす温度 | 下げる温度 | 上げ直す温度 |
|---|---|---|---|
| ビター | 50〜55度 | 27〜28度 | 31〜32度 |
| ミルク | 45〜50度 | 26〜27度 | 29〜30度 |
| ホワイト | 40〜45度 | 25〜26度 | 28〜29度 |
ミルクとホワイトは、ビターより低い温度帯です。 ここを混同する方が多くいます。
特にホワイトチョコレートは熱に弱く、ビターと同じ50度で溶かすと分離することがあります。
温度計を使ってください。 これが最大の対策です。指の感覚や見た目では、1〜2度の差は判断できません。そして、その1〜2度が結果を分けます。
Know:テンパリングとは何をしているのか
仕組みを理解すると、失敗の原因も分かります。
カカオバターには複数の結晶の形がある
チョコレートの主成分であるカカオバターは、固まるときに複数の結晶の形をとります。
このうち、もっとも安定した形で固まったチョコレートが、次の性質を持ちます。
- なめらかな口どけ
- つやのある表面
- パキッと割れる硬さ
- 型からきれいに外れる
- 常温で溶けにくい
テンパリングは、この安定した結晶だけを作る作業です。
3段階の意味
段階1:溶かす(高温)。
すべての結晶をいったん壊します。ここで温度が足りないと、古い結晶が残ります。
段階2:下げる(低温)。
結晶を作ります。ただし、この段階では安定した結晶と不安定な結晶の両方ができます。
段階3:上げ直す(中温)。
不安定な結晶だけを溶かします。安定した結晶は残ります。
この3段階を経て、安定した結晶だけが残る。 これがテンパリングの理屈です。
だから温度がずれると失敗する
段階1で温度が足りなければ、古い結晶が残ります。
段階2で下げ足りなければ、結晶が十分にできません。
段階3で上げすぎれば、せっかく作った安定した結晶まで溶けてしまいます。
どの段階でずれたかによって、症状が変わります。
Compare:症状から原因を特定する
| 症状 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 白い筋・まだらが出る | 上げ直しの温度が高すぎた |
| いつまでも固まらない | 結晶ができていない(下げ不足) |
| 常温でべたつく | 温度全般が高すぎた |
| つやが出ない | 結晶が不安定 |
| ざらつく・粘る | 下げすぎた |
| 型から外れない | 収縮していない(テンパリング不良) |
| ぼそぼそに分離した | 水が入ったか、加熱しすぎ |
| 表面が曇る | 冷やす環境の湿度が高い |
白い筋が出る場合
段階3で上げすぎた可能性が高いです。
ビターなら31〜32度が上限です。33度を超えると、安定した結晶まで溶けます。
湯せんに戻すとき、一気に温度が上がります。数秒ずつ、様子を見ながら上げてください。
固まらない場合
段階2で下げ足りなかった可能性があります。
27度前後まで、しっかり下げてください。「そろそろかな」ではなく、温度計で確認します。
また、そもそも段階2を省いていないかも確認してください。溶かして温度を下げただけでは、テンパリングになりません。
べたつく場合
全体的に温度が高すぎたケースです。
冷やしても常温で柔らかい、指につく。この状態は、安定した結晶がほとんどできていません。
ざらつく・粘る場合
下げすぎた可能性があります。
25度を下回ると、粘って作業しにくくなります。この状態で型に流すと、気泡が抜けず、口どけも悪くなります。
下げすぎた場合は、段階3で少し高めに上げ直すと調整できます。
分離した場合
これはテンパリング以前の問題です。
水が入ったか、加熱しすぎたか。 別の原因です。
Do:テンパリングの手順(水冷法)
もっとも基本的な方法です。
用意するもの
- チョコレート
- ボウル(2つ:湯せん用と冷水用)
- 温度計
- ゴムベラ
- お湯と冷水
すべての道具を、乾いた布で完全に拭いてください。 水滴が入ると分離します。
手順1:刻む
5mm角程度に細かく刻みます。
粗いと溶け残り、温度が均一になりません。
手順2:湯せんで溶かす
50〜55度の湯せんにかけ、ビターなら50〜55度まで上げます。
沸騰した湯を使わないでください。 湯気が入ります。火を止めてから湯せんにかけるくらいで十分です。
完全に溶けるまで、静かに混ぜます。
手順3:冷水で下げる
ボウルの底を冷水につけ、混ぜながら27〜28度まで下げます。
混ぜ続けてください。 止めると、底だけ冷えて温度が不均一になります。
冷水につけっぱなしにすると下がりすぎます。近づいたら外して、余熱で調整してください。
手順4:湯せんで上げ直す
再び湯せんにかけ、31〜32度に上げます。
ここがいちばん失敗しやすい工程です。 数秒ずつ、温度計を見ながら行ってください。
一気に上げると、簡単に33度を超えます。
手順5:確認テスト
型に流す前に、必ず確認してください。
スプーンの背やナイフの先に少量つけて、室温に3〜5分置きます。
成功の目安。 つやが出る。固まる。指で触ってもべたつかない。
失敗の目安。 白い筋が出る。固まらない。べたつく。
失敗していたら、段階1からやり直せます。 この確認を挟むだけで、型に流してから気づく無駄がなくなります。
手順6:型に流す
室温の型を使ってください。冷えた型は避けます。
流したあと、台に軽く打ちつけて気泡を抜きます。
手順7:固める
15〜18度の涼しい場所が理想です。
冷蔵庫を使う場合は、急冷を避けるため、庫内の温度が高めの場所に置いてください。
Do:もっと簡単な方法
水冷法が難しい場合の代替です。
種入れ法(タブリール法の簡易版)
刻んだチョコレートを取り分けておき、溶かしたチョコレートに加える方法です。
手順。
- チョコレートの3分の1を取り分けておきます。
- 残り3分の2を湯せんで50〜55度に溶かします。
- 湯せんからおろし、取り分けたチョコレートを加えて混ぜます。
- 溶けきったら温度を確認し、31〜32度に調整します。
取り分けたチョコレートが「種」になります。 市販の板チョコはテンパリング済みなので、安定した結晶を持っています。それを種として全体に広げる、という考え方です。
水冷法より温度管理が楽なので、私はこちらをよく使います。
電子レンジを使う場合
10〜20秒ごとに取り出して混ぜてください。
局所的に高温になるため、まとめて加熱すると焦げます。
完全に溶けきる前に止め、余熱で溶かすくらいがちょうどいいです。
そもそもテンパリング不要にする
目的によっては、避ける選択もあります。
生チョコやガナッシュは、生クリームを加えるためテンパリング不要です。
コーティング用チョコレート(パータグラッセ)を使えば、溶かすだけで固まります。
焼き菓子の生地に混ぜるなら、そもそも関係ありません。
テンパリングが必要なのは、チョコレートが表面に出る場合だけです。
私がテンパリングで失敗した話
実体験を書きます。
私が最初に失敗したのは、温度計を使わなかったときでした。
レシピの温度は読んでいたのですが、「だいたいこれくらい」と目分量で進めたのです。
結果、型から出したチョコレートは白い筋だらけでした。上げ直しの段階で、明らかに温度が高すぎたのだと思います。
1〜2度の差が結果を分ける。 これを実感してから、温度計は必ず使うようになりました。
2回目の失敗は、ホワイトチョコレートでした。
ビターと同じ50度で溶かしたところ、途中で分離してぼそぼそになりました。
ホワイトチョコレートは熱に弱く、40〜45度で扱う必要があります。同じ手順でいけると思い込んでいたのです。
3回目に学んだのが、確認テストの価値でした。
それまでは、テンパリングを終えたらそのまま型に流していました。だから、失敗に気づくのは固まった後です。
スプーンの背で確認する方法を知ってから、失敗の損失が激減しました。ダメなら、型に流す前にやり直せるからです。
この一手間を惜しまないでください。 3分待つだけで、1時間の無駄が防げます。
そして今は、種入れ法をよく使っています。水冷法より温度が安定しやすく、道具も少なくて済むからです。
この記事で参照した情報について
温度帯は一般的な目安です。チョコレートの銘柄やカカオバターの含有量によって適温は変わります。製菓用チョコレートには推奨温度が記載されていることが多いので、そちらを優先してください。
カカオバターの結晶に関する説明は、製菓および食品科学の一般的な知見をもとに整理しています。
なお、この記事は製菓の手順に関する解説です。加熱しすぎて焦げた場合や異臭がある場合は、使用せず処分してください。
よくある質問
Q. テンパリングは必ず必要ですか?
チョコレートが表面に出る場合は必要です。生チョコ、ガナッシュ、焼き菓子の生地に混ぜる場合は不要です。
Q. 温度計がなくてもできますか?
おすすめしません。1〜2度の差が結果を分けます。感覚では判断できません。
Q. 白い筋が出るのはなぜですか?
上げ直しの温度が高すぎた可能性が高いです。ビターなら31〜32度が上限です。33度を超えると失敗します。
Q. 固まらないのはなぜですか?
温度を下げる段階が不十分だった可能性があります。27度前後まで、温度計で確認しながら下げてください。
Q. ホワイトチョコも同じ温度でいいですか?
いいえ。ホワイトは熱に弱く、40〜45度で溶かします。ビターと同じ温度では分離することがあります。
Q. 失敗したチョコは使えますか?
食べられます。見た目と口どけの問題です。溶かしてやり直すこともできますし、焼き菓子やホットチョコレートに転用もできます。
Q. 簡単な方法はありますか?
種入れ法がおすすめです。刻んだチョコレートの3分の1を取り分けておき、溶かした残りに加えて混ぜる方法です。温度管理が楽になります。
Q. 成功したかどうか、いつ分かりますか?
型に流す前に確認できます。スプーンの背に少量つけて室温に3〜5分置き、つやが出て固まれば成功です。
まとめ
テンパリングの失敗について整理します。
原因のほとんどは温度管理です。 そして、種類によって温度帯が違います。
ビターは50〜55度→27〜28度→31〜32度。ミルクとホワイトは、これより数度低くなります。ホワイトを50度で溶かすと分離します。 私はこれで一度失敗しました。
症状から原因が特定できます。
白い筋が出るなら、上げ直しが高すぎ。固まらないなら、下げ不足。ざらついて粘るなら、下げすぎ。
温度計を使ってください。 1〜2度の差が結果を分けます。目分量では、まず成功しません。
そして、いちばんお伝えしたいのがこれです。
型に流す前に、確認テストをしてください。
スプーンの背に少量つけて、室温に3〜5分置く。つやが出て固まれば成功です。
失敗していれば、その場でやり直せます。3分の確認で、1時間の無駄が防げます。私はこれを知ってから、失敗の損失が激減しました。
そして、水冷法が難しければ種入れ法を試してください。刻んだチョコレートを種として使う方法で、温度が安定しやすくなります。
最後に。テンパリングが必要なのは、チョコレートが表面に出る場合だけです。生チョコを作るなら、この作業自体が要りません。目的に応じて、避ける判断も持っておいてください。

