この記事の要約
毎日食べているチョコレートの原料、カカオ。その生産地で、子どもが危険な労働をしている問題が指摘されてきました。
特に、世界のカカオの多くを生産している西アフリカで、この問題が報告されています。
背景にあるのは、カカオ農家の貧困です。
農家の収入が低いため、大人を雇う余裕がない。家族総出で働かなければ生活できない。学校に通えない子どもがいる。こうした状況が重なっています。
この問題を改善するために、企業、国、国際機関、NGOなどがさまざまな取り組みを進めています。消費者が目にしやすいのが、フェアトレードやレインフォレスト・アライアンスなどの認証マークです。
ただし、認証マークがあれば問題が完全に解決している、というわけではありません。
この記事では、問題の背景、認証マークの意味と限界、そして私たちが無理なくできることを整理します。
結論:知ること、選択肢を持つこと、無理なく続けること
先に結論をお伝えします。
カカオの児童労働は、一人の消費者の行動だけで解決できる問題ではありません。 貧困、教育、流通のしくみなど、多くの要因が絡み合っています。
それでも、消費者としてできることはあります。
1つめ。問題があることを知る。 まず、毎日のチョコレートの背景に関心を持つことです。
2つめ。認証マークの意味を知って、選択肢に入れる。 すべてを認証商品にする必要はありませんが、選べるときに選ぶことはできます。
3つめ。企業の取り組みに関心を持つ。 多くのメーカーが、調達方針や取り組みを公開しています。
4つめ。無理をしない。 「チョコを食べるのは悪いこと」と罪悪感を抱く必要はありません。続けられる形で関わることが大切だと思います。
Know:カカオはどこで作られているか
西アフリカに集中している
カカオの生産量が多いのは、アフリカ西部です。
コートジボワールとガーナの2か国で、世界の生産量の半分以上を占めるとされています。
小規模な農家が多い
カカオの多くは、家族で営む小規模な農園で作られていると言われています。
大規模なプランテーションではなく、数ヘクタールほどの農地を、家族で手入れしている農家が多いのです。
手作業が多い
カカオの栽培と収穫は、機械化が難しく、手作業が中心です。
- 実を木から切り落とす
- 実を割って中の豆を取り出す
- 豆を発酵させる
- 天日で乾燥させる
- 袋に詰めて運ぶ
こうした作業には、刃物を使う作業や、重いものを運ぶ作業が含まれます。
Know:児童労働の問題
何が問題とされているのか
子どもが家の手伝いをすること自体が、すべて問題なのではありません。
問題とされているのは、次のような労働です。
- 刃物を使う危険な作業
- 重すぎる荷物を運ぶ作業
- 農薬を扱う作業
- 長時間の労働
- 学校に通えなくなるほどの労働
国際的には、子どもの健康や成長、教育の機会を損なう労働が、なくすべき児童労働とされています。
どれくらいの規模か
西アフリカのカカオ生産地では、多くの子どもが危険な労働に関わっているという調査報告があります。
調査によって数字は異なりますが、100万人を超える規模とする報告もあり、長年にわたって課題とされてきました。
なぜなくならないのか
主な理由として、次のようなことが指摘されています。
農家の収入が低い。 カカオの販売価格に対して、農家が受け取る金額は十分とは言えないと言われています。大人を雇う余裕がなく、家族の労働に頼らざるを得ません。
学校に通いにくい。 近くに学校がない、学費や教材費が負担になる、といった事情があります。
生産の現場が把握しにくい。 小規模な農家が非常に多く、仲買人を通じて流通するため、どの農家でどんな働き方がされているかを追いにくいのです。
価格の変動。 カカオの国際価格が変動すると、農家の収入が不安定になります。
Know:認証マークとは
主な認証
チョコレートのパッケージで見かけることがある認証マークには、次のようなものがあります。
| 認証 | 主な考え方 |
|---|---|
| 国際フェアトレード認証 | 生産者に最低価格や奨励金を保証し、生活や地域の改善を支援する |
| レインフォレスト・アライアンス認証 | 環境の保全、労働者の権利、生産者の暮らしの改善をめざす |
| 有機(オーガニック)認証 | 農薬や化学肥料に頼らない生産方法を認証する(児童労働が主な基準ではない) |
※認証ごとの基準や仕組みは、各認証団体の情報をご確認ください。
認証の意味
認証マークは、一定の基準に沿って生産・流通されていることを、第三者が確認したという印です。
児童労働をなくすための取り組みや、監視の仕組みを基準に含む認証もあります。
認証の限界
一方で、認証マークがあれば問題が完全にない、とは言い切れません。
- すべての農家を常に監視することは難しい
- 認証のコストが、小規模な農家には負担になることがある
- 認証の基準や運用に課題があるという指摘もある
- 認証を取っていないが、独自に取り組んでいる生産者や企業もある
認証は「改善に向けた取り組みの目印のひとつ」と考えるのが、現実的だと思います。
Know:企業や国の取り組み
企業の取り組み
多くのチョコレートメーカーが、カカオの調達について方針や取り組みを公開しています。
- 生産地の農家への技術支援
- 学校の建設や教育支援
- 児童労働を見つけて対応する仕組みづくり
- 生産地までさかのぼれる調達(トレーサビリティ)
メーカーの公式サイトの「サステナビリティ」「CSR」などのページで確認できることがあります。
国や国際機関の取り組み
生産国の政府や、国際機関、NGOなども、教育の普及、農家の収入向上、監視体制の強化などに取り組んでいます。
カカオの価格と農家の収入
近年、カカオの国際価格が上昇しています。
価格の上昇が、どこまで農家の収入の改善につながるかは、流通のしくみによって変わると言われています。
Do:私たちにできること
1. 知ること
毎日のチョコレートの背景に、関心を持つことが出発点だと思います。
2. 認証マークを選択肢に入れる
すべてを認証商品にしなくても大丈夫です。
- 贈り物を選ぶとき
- 少し特別なチョコを買うとき
- 同じくらいの価格で迷ったとき
こうした場面で、選択肢のひとつとして認証商品を選ぶことはできます。
3. メーカーの取り組みを見てみる
よく食べるメーカーの公式サイトを、一度見てみてください。
どんな取り組みをしているか知ると、商品を選ぶときの参考になります。
4. 生産地が分かる商品を選ぶ
ビーントゥバーなど、生産地や農園との関係を公開している商品もあります。
価格は上がりますが、どこで、誰が作ったカカオかが分かる商品です。
5. 無理をしない
「問題があるからチョコを食べてはいけない」と考える必要はありません。
カカオの生産は、多くの農家の生活を支える産業でもあります。
大切なのは、無理のない形で、関心を持ち続けることだと思います。
6. 情報を鵜呑みにしない
この問題については、立場によってさまざまな情報があります。
公的機関や認証団体、信頼できる報道など、複数の情報源を見るようにしてください。
私が考えるようになったこと
実体験を書きます。
私がこの問題を知ったのは、毎日のように高カカオチョコレートを食べるようになって、しばらく経った頃でした。
カカオがどこで作られているのかを調べていて、児童労働の報告にたどり着いたのです。
正直、毎日食べているものの背景に、そんな問題があるとは思っていませんでした。 少し、食べるのをためらう気持ちにもなりました。
ただ、調べていくうちに、「チョコを食べるのをやめる」ことが解決にはならないと分かってきました。カカオは、多くの農家の生活を支えている作物だからです。
そこで、自分なりにできることを決めました。
贈り物にチョコを選ぶときは、認証マークのある商品を優先する。
よく食べるメーカーの取り組みを、一度は読んでみる。
毎日の高カカオチョコは、無理をせず、今までどおり楽しむ。
大きなことはできていません。それでも、知る前と後で、チョコレートを手に取るときの気持ちは変わりました。
この記事を読んでくださった方にも、次にチョコを買うとき、少しだけパッケージの裏を見てもらえたら、と思っています。
この記事で参照した情報について
カカオの主要生産国と生産の特徴については、一般に知られている傾向をもとに整理しています。
児童労働の規模や背景については、国際機関や研究機関、NGOなどの調査報告で指摘されている内容をもとに記載しています。調査の方法や時期によって数字は異なります。 最新の情報は、国際労働機関(ILO)などの公表資料をご確認ください。
認証制度の仕組みや基準については、概要を紹介したものです。詳しい内容は、各認証団体の公式情報をご確認ください。
企業の取り組みは一般的な例を挙げたもので、特定の企業を評価するものではありません。
よくある質問
Q. カカオの児童労働とは何ですか?
カカオの生産地で、子どもが刃物を使う作業や重い荷物を運ぶ作業など、健康や教育の機会を損なう労働をしている問題です。特に西アフリカで報告されています。
Q. なぜ児童労働が起きるのですか?
カカオ農家の収入が低く大人を雇う余裕がないこと、学校に通いにくいこと、小規模農家が多く現場を把握しにくいことなどが指摘されています。
Q. 認証マークがあれば児童労働はないのですか?
完全にないとは言い切れません。すべての農家を常に監視するのは難しいためです。改善に向けた取り組みの目印のひとつと考えるのが現実的です。
Q. どんな認証マークがありますか?
国際フェアトレード認証、レインフォレスト・アライアンス認証などがあります。有機認証は栽培方法の認証で、児童労働が主な基準ではありません。
Q. チョコを食べないほうがいいのですか?
そう考える必要はないと思います。カカオは多くの農家の生活を支える作物でもあります。無理のない形で関心を持つことが大切です。
Q. 消費者にできることは何ですか?
問題を知ること、贈り物などで認証商品を選択肢に入れること、メーカーの取り組みに関心を持つことなどです。
Q. 認証商品は高いですか?
一般的な商品よりやや高いことが多いです。すべてを認証商品にしなくても、選べる場面で選ぶだけでも関わり方のひとつになります。
Q. 正確な情報はどこで調べられますか?
国際機関、認証団体、メーカーの公式情報、信頼できる報道など、複数の情報源を見ることをおすすめします。
まとめ
カカオと児童労働の問題について整理します。
カカオの生産地、特に西アフリカで、子どもが危険な労働をしている問題が指摘されてきました。
背景には、カカオ農家の貧困があります。収入が低く、家族の労働に頼らざるを得ない。学校に通いにくい。小規模な農家が多く、現場を把握しにくい。
この問題に対して、企業、国、国際機関、NGO、認証団体などが取り組みを進めています。
フェアトレードやレインフォレスト・アライアンスなどの認証マークは、改善に向けた取り組みの目印のひとつです。ただし、マークがあれば問題が完全にない、とは言い切れません。
私たちにできることは、知ること、選択肢を持つこと、無理なく続けることだと思います。
私は、贈り物では認証商品を優先し、毎日のチョコは今までどおり楽しむ、と決めました。大きなことはできていませんが、知る前と後で、チョコを手に取るときの気持ちは変わりました。
「チョコを食べるのは悪いこと」と思う必要はありません。次に買うとき、少しだけパッケージの裏を見てみてください。

