この記事の要約
カカオポリフェノールに、公的に定められた1日の摂取量はありません。
「1日◯mg摂りましょう」という基準を探している方には、期待に添えない答えかもしれません。しかし、これが事実です。
ただし、目安がまったくないわけではありません。研究で用いられている量から、現実的な範囲を導くことはできます。
その範囲は、おおむね200〜600mg程度です。高カカオチョコレートに換算すると、1日5枚前後にあたります。
この記事では、なぜ公的な基準がないのかを説明したうえで、実際にどれくらいを目安にすればよいのかを整理します。ココアやお茶との比較も載せますので、どの食品から摂るのが効率的かも見えてくるはずです。
結論:明確な基準はないが、1日200〜600mgが現実的な目安
先に結論をお伝えします。
カカオポリフェノールには、厚生労働省が定める推奨量や目安量が設定されていません。ビタミンやミネラルとは扱いが異なるためです。
理由は、必須栄養素ではないからです。摂らなくても欠乏症が起きるわけではありません。だから、基準を定める対象になっていないのです。
では、どう考えればよいのか。私は、研究で用いられている量を参考にするのが現実的だと考えています。
カカオポリフェノールに関する研究では、1日200〜600mg程度を摂取する設計が多く見られます。この範囲であれば、食品として無理なく届きます。
高カカオチョコレート(カカオ72%)なら、1枚5gあたりおよそ120〜130mgのポリフェノールを含みます。つまり、2〜5枚で範囲に収まります。
無理に増やす必要はありません。この量なら、脂質やカロリーの面でも問題になりにくいからです。
Know:カカオポリフェノールとは何か
名前は総称であって、単一の成分ではない
まず前提を整理します。
カカオポリフェノールは、ひとつの物質の名前ではありません。カカオに含まれるポリフェノール類の総称です。
主な成分として、エピカテキン、カテキン、プロシアニジンなどが含まれます。緑茶のカテキンや赤ワインのポリフェノールと、化学的には近い仲間にあたります。
こうした成分には抗酸化作用があると報告されています。体内で生じる酸化にはたらきかける、という文脈で研究が進められてきました。
なぜ公的な摂取基準がないのか
理由は明確です。必須栄養素ではないからです。
「日本人の食事摂取基準」に数値が載っているのは、不足すると健康を損なう栄養素です。鉄、カルシウム、ビタミンCなどがこれにあたります。
カカオポリフェノールは、摂らなくても欠乏症は起きません。だから基準の対象外なのです。
これは「重要でない」という意味ではありません。「必須ではない」という意味です。ここは混同しやすいので、区別しておいてください。
研究で使われている量から目安を考える
基準がないなら、何を手がかりにすればよいのか。
私は、研究の設計を参考にするのが妥当だと考えています。
カカオポリフェノールやフラバノールに関する研究では、1日200mg前後から、多いもので900mg程度までの摂取量が用いられています。中心となるのは200〜600mgの範囲です。
食品として現実的に続けられるのも、この範囲です。900mgを毎日となると、脂質とカロリーが無視できない量になります。
だから私は、200〜600mgを目安として提示しています。研究の範囲内であり、かつ生活のなかで無理がないからです。
高カカオチョコレート何枚分にあたるか
具体的な数字に直します。
明治チョコレート効果カカオ72%の場合、1枚(5g)あたりのカカオポリフェノールは約127mgと公表されています。
これをもとに計算すると、次のようになります。
1枚で約127mg。2枚で約254mg。3枚で約381mg。5枚で約635mgです。
つまり、2〜5枚で目安の範囲に収まる計算です。
カカオ86%やカカオ95%の商品は、1枚あたりのポリフェノール量がさらに増えます。カカオ分が上がれば、含まれる量も上がるからです。
ただし、カカオ分が高いほど苦味も強くなります。続けられなければ意味がないので、味の好みとのバランスで選んでください。
Compare:ほかの食品と比べてどうか
カカオだけがポリフェノールの供給源ではありません。ほかの食品と比べてみます。
| 食品 | 1回分の量 | ポリフェノール量の目安 | 続けやすさ |
|---|---|---|---|
| 高カカオチョコ(72%) | 5g(1枚) | 約127mg | 高い |
| 純ココア | 5g(1杯分) | 約200mg | 高い |
| 緑茶 | 200ml(1杯) | 約115mg | 非常に高い |
| コーヒー | 150ml(1杯) | 約200mg | 非常に高い |
| 赤ワイン | 100ml | 約200mg | 低い |
| りんご | 200g(1個) | 約150mg | 中程度 |
※数値は各種の食品成分データおよびメーカー公表値をもとにした概算です。品種、焙煎、抽出条件によって大きく変動します。
この表から分かることが、2つあります。
1つめは、カカオが突出しているわけではないという点です。コーヒーや緑茶でも、同程度の量を摂れます。
2つめは、それでもカカオには利点があるという点です。それは重量あたりの濃度です。わずか5gで127mgに届く食品は、そう多くありません。
「カカオでなければならない」わけではない
正直に書きます。ポリフェノールを摂ることだけが目的なら、コーヒーや緑茶のほうが手軽です。
カロリーがほぼゼロで、飲むだけで済むからです。高カカオチョコレートは5枚で140kcal前後になります。この差は小さくありません。
では、なぜチョコレートを選ぶのか。
理由は、間食の置き換えになるからです。飲み物では、甘いものを食べたいという欲求は満たせません。
「どうせ間食を食べるなら、ポリフェノールも一緒に摂れるものにする」。この考え方が、高カカオチョコレートのいちばん自然な位置づけだと私は考えています。
ポリフェノールを摂るために間食を増やすのは、順序が逆です。ここを取り違えないでください。
種類の違いにも意味がある
もうひとつ補足します。
ポリフェノールは総称であり、食品によって含まれる種類が違います。緑茶のカテキン、コーヒーのクロロゲン酸、カカオのプロシアニジン。それぞれ性質が異なります。
だから、同じ「ポリフェノール200mg」でも、まったく同じものを摂っているわけではありません。
いろいろな食品から少しずつ摂る。これがもっとも無難な考え方だと思います。ひとつの食品に集中させる必要はありません。
Do:効率よく摂るための実践ポイント
1回にまとめず、分けて摂る
ポリフェノールは体内に長くとどまらないとされています。
摂取後、数時間で血中の濃度は下がっていきます。だから、1日1回まとめて摂るより、何回かに分けたほうが合理的です。
高カカオチョコレートなら、朝1枚、午後2枚、といった配分です。まとめて5枚食べるより、この形をおすすめします。
加熱と加工に注意する
ポリフェノールは、加工の過程で失われることがあります。
チョコレートの場合、製造時のアルカリ処理でポリフェノール量が減ることが知られています。ココアパウダーでも同様です。
「ダッチプロセス」「アルカリ処理」と表示のあるココアは、この処理が行われています。含有量を重視するなら、無糖の純ココアで、アルカリ処理の記載がないものを選ぶと有利です。
ただし、味は処理をしたもののほうがまろやかです。ここも好みとの兼ね合いになります。
「高カカオ」表示だけで判断しない
カカオ分が高ければポリフェノールも多い。この関係は基本的に成り立ちます。
ただし、商品によってポリフェノール量を公表しているものと、していないものがあります。
数字を確認したいなら、公表しているメーカーの商品を選ぶのが確実です。明治のチョコレート効果シリーズは、この点で情報が整っています。
鉄分やカルシウムを意識している人は時間をずらす
ここは注意点です。
カカオポリフェノールには、非ヘム鉄の吸収を妨げる可能性が指摘されています。カルシウムとの関係も同様です。
鉄やカルシウムを意識して食事を摂っている方は、その直後を避けてください。1〜2時間ほど空ければ十分です。
良い成分だからといって、すべての場面で有利に働くわけではありません。
とりすぎるとどうなるか
「多く摂るほど良い」という話ではありません。ここも押さえておいてください。
チョコレートで摂る場合の上限は脂質で決まる
高カカオチョコレートでポリフェノールを増やそうとすると、必ず脂質とカロリーがついてきます。
10枚食べれば約280kcal、脂質は約20gです。間食としては多すぎます。
ポリフェノールの量ではなく、脂質のほうが先に上限を作ります。5枚程度で止めておくのが現実的です。
カフェインとテオブロミンも増える
カカオ分が高い商品ほど、カフェインとテオブロミンも増えます。
寝つきに影響が出る方は、夕方以降を避けてください。ポリフェノールのために睡眠を削っては、本末転倒です。
サプリメントでの高用量摂取は慎重に
食品から摂る範囲では、過剰摂取の心配はほとんどありません。
ただし、サプリメントで高用量を摂る場合は話が変わります。ポリフェノール類のなかには、大量摂取で肝機能への影響が報告されているものもあります。
食品として摂る。この範囲を守っていれば、まず問題は起きません。サプリの利用を検討される場合は、医師や薬剤師にご相談ください。
私が実際に続けてみて感じたこと
数字の話が続いたので、実感も書いておきます。
私は高カカオチョコレートを、午後の間食として日常的に食べています。カカオ72%を3枚。計算上、ポリフェノールは約380mgです。
始めた当初は、枚数を増やしたほうが良いのではないかと考えていました。しかし、5枚に増やした時期に気づいたことがあります。夕食前の空腹感が薄れすぎて、食事が進まなくなったのです。
間食としては、それは行きすぎです。3枚に戻したところ、ちょうどよく収まりました。
体感として何かが劇的に変わったか。正直に言えば、そういう実感はありません。ポリフェノールは、飲めば効くという類のものではないからです。
ただ、間食の質が変わったことは確かです。以前は午後にスナック菓子を食べていました。それがなくなっただけでも、続ける意味はあると考えています。
もうひとつ、失敗もありました。数字にこだわって、苦手なカカオ95%を選んだ時期があります。ポリフェノールは多いのですが、続きませんでした。1週間ほどで箱ごと残りました。
含有量が多くても、口に合わなければゼロです。この当たり前のことを、実感として学びました。
この記事で参照した情報について
カカオポリフェノールの含有量は、明治をはじめとする各メーカーが公表している数値をもとにしています。商品によって差があり、同じカカオ分でも一致するとは限りません。
ほかの食品のポリフェノール量は、各種の食品成分データをもとにした概算です。品種、産地、加工方法、抽出条件によって大きく変動します。表の数値は目安としてお読みください。
摂取量の目安として示した200〜600mgという範囲は、公的な基準ではありません。カカオポリフェノールやフラバノールに関する研究で用いられている摂取量をもとに、私が現実的な範囲として整理したものです。
なお、この記事は栄養情報の解説であり、特定の効果を保証したり、診断や治療を目的としたりするものではありません。持病のある方や服薬中の方は、医師にご相談ください。
よくある質問
Q. カカオポリフェノールの1日の推奨量はありますか?
公的な推奨量は設定されていません。必須栄養素ではないためです。研究で用いられる量を参考にすると、1日200〜600mg程度が現実的な目安になります。
Q. 高カカオチョコレート何枚分ですか?
カカオ72%の商品なら、1枚あたり約127mgです。2〜5枚で目安の範囲に収まります。
Q. たくさん摂るほど効果が上がりますか?
そうとは限りません。チョコレートで増やそうとすると脂質とカロリーも増えます。5枚程度で止めておくのが無難です。
Q. ココアとチョコレート、どちらが効率的ですか?
ココアです。純ココア5gで約200mg摂れるうえ、脂質と糖質を抑えられます。ただし、間食としての満足感はチョコレートのほうが上です。目的で選び分けてください。
Q. コーヒーや緑茶でも同じですか?
ポリフェノールを摂るという点では同等かそれ以上です。ただし種類が異なります。いろいろな食品から摂るほうが無難だと考えています。
Q. 一度にまとめて摂ってもいいですか?
分けて摂るほうが合理的です。ポリフェノールは体内に長くとどまらないとされているためです。1日2〜3回に分けてみてください。
Q. ミルクと一緒だと吸収が落ちると聞きましたが本当ですか?
そのような指摘は以前からありますが、結論は定まっていません。過度に気にする必要はないと考えています。
Q. サプリメントで摂ったほうが効率的ですか?
食品から摂る範囲であれば十分です。高用量のサプリメントは、肝機能への影響が指摘されているものもあります。利用を検討される場合は医師や薬剤師にご相談ください。
まとめ
カカオポリフェノールの摂取量について整理します。
公的な基準はありません。必須栄養素ではないからです。「1日◯mg」という決まった答えを探しても、見つからないのが正解です。
そのうえで、研究で用いられている量を手がかりにすると、1日200〜600mgが現実的な範囲になります。高カカオチョコレートなら2〜5枚です。
摂り方のポイントは3つです。1回にまとめず分けること。カカオ分と含有量の関係を理解して選ぶこと。そして、鉄分やカルシウムを意識する場面では時間をずらすことです。
増やしすぎる意味はありません。チョコレートで増やせば、脂質とカロリーが先に上限を作ります。
そして、いちばん大事なことを最後に書きます。ポリフェノールのために間食を増やすのは、順序が逆です。
どうせ食べる間食を、より条件のよいものに置き換える。この発想でこそ、高カカオチョコレートは活きてきます。
数字は判断の助けになりますが、数字に振り回されると続きません。まずは、自分が続けられるカカオ分の商品を見つけることから始めてみてください。

